魔導師排斥論者は、ルーデュニア聖王国に一定数存在する。

彼らの理論をざっくりと説明すると。

「魔法を使う魔導師は、一般の人間とは異なる存在であり。

力を持たない一般人にとって、魔導師は脅威以外の何者でもない。

魔導師がいる限り、一般人は常に魔導師の脅威に怯え、顔色を伺っていなければならない。

第一、魔法という力は自然界に反した力で、本来人間が持つべきものではない。

故に、魔導師はこの世から消えなければならない種族である」

彼らの主張をまとめると、こんな感じだろうか。

要するに、「魔導師ダメ!絶対!」ってことだ。

魔法が使えない一般人にとって、人智を越えた力である魔法が、脅威であるのは事実だろう。

そして、魔導師を恐れる人間が、イーニシュフェルトのような魔導師養成校を、目の敵にしていることも知っている。

私の学院も、何年かに一度、過激な魔導師排斥論者が、学校の門にペンキで心ない言葉を落書きしたり。

過去には、校舎内に爆竹を投げ入れられた例もある。

けれど、そういう魔導師排斥論者は、基本的には魔法を使えない一般人だ。

それは当然だ。魔導師排斥論者は、魔法というものを恐れているのだから。魔法を使える魔導師が、魔法を恐れるなどおかしな話だ。

だから、彼女が魔導師排斥論者なら、一般人であるはず。

それなのに彼女は、自分の顔を魔法で作った仮面で隠していた。

魔法が使えるということは、彼女は魔導師なのだ。

魔導師が、何故魔導師排斥論者になる?

羽久の言う通り、矛盾している。

だが、これでどうして私が逮捕されたのかが分かった。

全ては、魔導師排斥論者であるこの子の企みだ。

この国で、第一線で活躍する魔導師を育成する私と、イーニシュフェルト魔導学院がなくなれば、国内の魔導師排斥論者は、諸手を上げて拍手喝采することだろう。

だからこそ、苦労して私に冤罪を着せたのだ。

「君は、どうして自身が魔導師でありながら、魔導師排斥論者になったんだい?」

「…」

彼女は答えず、私を睨むばかりだった。

いや、そんなに睨まれても…。

「…いずれにしても、お前に有罪判決が下ることは変わらない。お前は思想犯として処刑されるんだ…!」

彼女は、勝ち誇ったようにそう言った。

それはまぁ確かにそうなんだが…と。

思った、そのとき。

「学院長!」

「学院長先生!」

そこに飛び込んできたのは、吐月君とシュニィちゃんの二人だった。