「な、何だお前は…」

「離れろ!」

警官達は、必死に拳銃を向けて脅していたが。

あんなもの、二十音の前では、玩具の豆鉄砲ですらない。

「二十音、やめなさい。私は閉じ込められてなんかいないから」

大体君が今そこに、大穴を開けたんだから。

閉じ込められてなんかいない。

「こんな牢屋じゃ、最初から私を閉じ込められはしないよ。わざと捕まってたに過ぎない。それが人間の法律だと思ったから」

これは事実である。

私にとって、こんな鉄格子、自動ドアと同じだ。

出ようと思えば、いつだって出られた。

だが、人間の法律に違反するだろうと思ったから、敢えて捕まっていただけで。

しかし。

「…」

二十音は、私の方を見ようともしなかった。

やっぱり、駄目か。

この子は、「閉じ込められる」ことに強く反応してしまう。

…不味いな。

「…全部、奪う」

二十音は、懐中時計を手に、拳銃を向ける警官に向かって飛んだ。

…仕方がないか。

本気になった二十音を止めるには、こうするしかない。

「…゙悪魔は神を穿づ」

小さく呪文を呟くと。

私が、自身の身体の中に封印していた「秘密の道具」が現れた。

「rustel」

「…!」

二十音の胸に、そっとその魔法をかける。

途端、二十音はぽやんとこちらを見上げて、それから意識を失った。

ドサッと倒れる二十音の身体を支え、優しく抱き締めた。

永遠に、離したくなかった。

「…良いんだよ。君は私を守らなくて」

私が、君を守ってあげるから。

例え世界の全てを犠牲にしても、私の命を犠牲にしても、君だけは助けるから。

その為に私は。






















…世界を、裏切ったんだからね。