──────…シルナが学院から去り。

今度は、イーニシュフェルト魔導学院まで閉鎖され。

生徒達は今のところ学生寮に待機しているが、それも長くはない。

警察の方からは、さっさと生徒を故郷に返せ、と再三口うるさく言われているが。

一度故郷に帰ってしまったら、もう二度と戻ってこないようが気がして。

生徒を守るのは、俺がシルナに託された使命だ。

だから、それだけは守ろうと思った。

でも今となっては、それも限界がある。

こうなったらもういっそ、形振り構わず、シルナを助ける為に動いた方が良いのではないかと、何度思ったか。

その度に、俺が身勝手なことをしたら生徒にまで類が及ぶかもしれないと、思い留まった。

俺一人が捕まるのなら、何も怖くはない。

しかし、生徒が巻き込まれるとなれば話は別だ。

シルナが俺に託したものを、みすみす傷つけるような真似をしてしまったら。

それはきっと、シルナが最も嫌うことだ。

それが分かっているだけに、動くに動けなかった。

「…くそっ」

俺に出来ることは、シルナのいない学院長室で、何も出来ない自分に苛立ち、悪態をつくことだけだった。

…ここで腐っていても仕方がない。

せめて、不安に苛まれているであろう生徒達を、少しでも励まさなくては、と。

立ち上がった、そのとき。

「…あ」

駄目だ、今はだめ、

















───────…。

その子は、きょろきょろと周りを見渡した。

「…しーちゃん?」

いつもそこにいるはずの、いつもそこで自分を待っていてくれるはずの人が、いなかった。

…何で、いない?

何処に行ってしまったのか?

自分を置いて?

「…しーちゃん…」

迷子になった子供が、まず一番に何をするか。

そんなものは、決まっている。