私も、母も、そもそもあの村では受け入れられていなかった。

ルーデュニア人の父が、母を家に連れてきたから…だから、私達親子は何とか、あの村にいられたのだ。

村にいたのは、生まれてから僅か五年程度のものだったが。

今でも、私と母が道を通る度、石を投げられたり、唾を吐きかけられたことを覚えている。

市場に行っても、私達親子にだけは何も売ってくれなかったし、何も買ってはくれなかった。

父が私達を庇ってくれることはなかった。

父は私達を疎ましく思っており、よく「出ていけ」と私や母を殴っていた。

そんな環境に、ずっといたからだろうか。

母もまた、私を愛してはくれなかった。

母は私のことを、お荷物としか思っていなかったようだ。

「お前がいなければ」とか、「お前がそんな髪の色をしてなかったら」とか言っては、私をぶったり、つねったりしていた。

私は悲しかった。私が母を愛していたように、母にも私を愛していて欲しかったから。

でも、それは叶わなかった。

それどころか、私達はある日突然、村を追い出されることになった。

父が死んだからだ。

父は、街に行く途中、不慮の事故で亡くなってしまった。

いつも乱暴だった父のことは、好きでもなんでもなかったから、父の死に対しては、悲しいという思いは沸かなかった。

それよりも、父の死によって、私達親子が村を追放されたことの方に驚いた。

これは死活問題だった。

今まで私達親子が村にいられたのは、父がいたから。

父が死んだ今、お前達にこの村にいる権利はない。

そう言われて、私達親子は着のみ着のまま、荷物も持たされずに村を追い出された。

村を追い出された私達に、行く宛はなかった。

何処に、アルデン人の親子を受け入れてくれる場所があるだろう。

私達は何日も、行く宛を求めてさまよった。

何日も、何週間もさまよって、さまよって…そしてある日。

森の中で目を覚ましたら、母がいなくなっていた。

あぁ、捨てられたんだな、と思った。

不思議なことに、こちらはあまり驚かなかった。