施設の職員達は、誰もが慇懃無礼で、ぞんざいな扱いを受けた。

私がアルデン人だから、余計に態度が悪いのだろう。

気にすることなく、私は毅然として言い放った。

「聖魔騎士団副団長、魔導部隊隊長のシュニィ・ルシェリートです。フユリ女王陛下の命令で、シルナ・エインリーさんの事件について、調査しに来ました」

フユリ女王、の名前を聞いて、彼らの顔色が変わった。

さすがに、フユリ様の名前を聞いたら、無視は出来ないらしい。

勿論、フユリ様から命じられた、というのは嘘だ。

そんな命令は、一切受けていない。

私は、フユリ様の名前を勝手に利用して、押収された証拠品を盗み見ようとしているのだ。

こんなことをしたとバレたら、当然私は、厳しい処罰か下されるだろう。

アルデン人である私に、情状酌量の余地などない。

徹底的に裁かれることになる。それは分かっている。

それでも構わないと判断したから、私はここに来たのだ。

「わ、分かりました…。フユリ様の命令なら…」

慌てた様子で、職員達が私を中に招き入れた。

上手く行ったようだ。

証拠品は、金庫に厳重に保管されていた。

「学院長の部屋から見つかったという禁書は、これですか?」

「はい」

金庫の中に、四冊ほど、本が入っていた。

これが、禁書…。

「…え?」

私は、そのうちの一冊を掴んで、パラパラと捲った。

「ちょ、ちょっと。証拠品ですよ。勝手に触られては…」

担当官が止めたが、私は構わなかった。

…こんな、ことって。

「…これが、禁書ですか?」

「は?禁書なんでしょう?」

素人の目には、この魔導書が禁書なのかどうなのかは分からない。

それを判断出来るのは、私達のような魔導師や、魔導書の扱いに長けた図書館の職員だけ。

警官達が、押収した魔導書を「禁書」と断定しているということは、そのような専門家の誰かがこの本を「禁書だ」と言ったのだ。

…で、それは誰だ?

「…この魔導書を、禁書だと判定したのは誰です?」

「王立図書館の司書です。魔導書フロアを担当していると」

…成程、一応専門家が判定したのか。

ならば、その専門家と言うのは…とんでもないペテン師だ。

…学院長が、こんなことをするはずがないんだから。

「そうですか。分かりました。もう結構です」

これで、学院長にかかっている疑惑が一つ、解けた。