学院が閉鎖されることを聞いて憤慨したのは、私だけではない。

アトラスさんは、私以上に激怒していた。

こんなのあまりにも横暴過ぎる、学院長がそんなことするはずなのに、と。

物申してくる、とばかりに殴り込もうとしたので、それを必死に止め。

しかしここで退いてしまえば、学院長を助けることは出来ない。

従って。

「アトラスさん、あなたの代わりに私が行きます」

「?殴り込みに、か?」

いや、殴り込みではなく。

「それなら俺も行く!俺とシュニィが組めば、敵なんて…」

「殴り込むんじゃありません。倒したところで私達が捕まるのは目に見えてるでしょう」

「そ、それはそうだが…。じゃあ、何をしに行くんだ?」

「…私が何より気になっているのは、学院長を逮捕させる原因となった『証拠』です」

大きくは、二つ。

この二つが、学院長を逮捕させたのだ。

「証拠…。確か生徒の証言と、学院長室から見つかった禁書、だったよな?」

「そうです」

「成程。ならその生徒を探しに行くんだな!大丈夫だ、嘘を言ったり逃げようとしたら、俺が拳で…」

「殴らなくて良いので」

あなたはどうして、そう短絡的なんですか。

まぁそれも手だとは思いますけど。

証言をした生徒が、本当に嘘をついているなら、アトラスさんが殴れば「ごめんなさい嘘の証言をしました」と白状するだろう。

しかし、もし嘘をついていなかったとしたら…。

いや、生徒の証言は、ひとまず横に置いておこう。

それよりも。

「私が気になるのは、学院長室で見つかった禁書です」

禁書の類は、普段は王立図書館と、王宮書庫の地下封印室のどちらかに封印されている。

今回学院長の部屋から見つかったのは、王立図書館に封印されていたはずの禁書だった。