アルデン人の呪い魔法を恐れたルーデュニア人は、アルデン地方を焼き尽くし、アルデン人を皆殺しにした。

アルデン地方ごと、呪い魔法を消し去ろうとしたのだ。

元々アルデン地方は小さな土地で、住んでいる人もそう多くはなかった。

彼らはほとんど抵抗することも出来ず、虐殺されてしまったそうだ。

一部の人々だけが何とか逃げ延びて、ルーデュニアに紛れて暮らしているが。

何千年とたった今でも、ルーデュニア人の中から、「アルデン人は野蛮な異端民族だ」という認識は消えていない。

私からすれば、野蛮なのはどちらだ、と思うけれど。

私の父親ですら、母と私のことを疎んでいるようだった。

母も、私を愛してはくれなかった。

私の、「灰かぶり」色の髪を掴んでは、恨みがましく言ったものだ。

「こんな色じゃなければ良かったのに」と。

娘のアイナは、幸いにも「灰かぶり」色の髪は受け継がなかった。

アトラスさんの血の方が濃かったようで、髪の色はアトラスさんと同じだ。

私はそのことに心底ホッとした。

もし娘が私と同じ「灰かぶり」色の髪だったら。

私は半狂乱になって、娘の髪を全部剃り落としていただろう。

母が、何度も私にそうしたように。

私はこの髪の色のせいで、生まれてからずっと、ずっと辛い思いをしてきた。

「薄汚いアルデン人の娘」だと揶揄され、石を投げられ、唾を吐きかけられながら生きてきた。