荒廃した大地を見つめながら、里の長は小さく呟いた。




「…最早、残る方法は一つしかあるまい」

「…」

「イーニシュフェルトの禁呪を使い、我らの命を糧にして、あの邪神を討ち滅ぼすのだ」

「…禁呪を以てしても、邪神を殺すことは出来まい。精々、長きに渡って封じ込められるくらいが関の山だ」

「それでも良い。それだけ時間があれば、邪神を滅ぼす別の方法を見つけることも出来よう。だから、それまでの時間稼ぎに…我らの命を使うのだ」

「…」

この方法に賛成すれば、皆死ぬ。

術を行う一人を除いて、皆邪神を封じる為の糧として、命を消費されてしまう。

それなのに、誰も反対しなかった。

反対したところで、このままでは一人すら助からないと分かっているからである。

「…して、術を行うのは誰だ?」

「…決まっている。我が一族で最も若く、そして非凡な才能に恵まれた賢者…」

長は、私の方を向き。

手に持っていた『聖宝具』を、私に差し出した。

「邪神を封じ、そして後の世で邪神が再び現れたときは…お前の手で、今度こそ奴を殺す。…誓ってくれるな?」

「…はい」

私は差し出されたその杖を、確かに受け取った。