資料を確認した後、俺とベルフェゴールは寮に戻った。

幸い捕まらずに済んだが…後日になって不法侵入がバレないとも限らない。

捕まる前に、翌朝すぐに動くことにした。

幸い、授業はないのだ。

時間ならいくらでもある。

俺はまず、同じクラスの女子生徒を、学生寮の個別談話室に呼び出した。

ここなら、誰かに会話を聞かれることはないと思ったからだ。








「吐月君?どうしたの?」

「あぁ…。Iさん。ごめん、いきなり」

Iさんは、俺と同じクラスの生徒で。

そして、昨夜俺が盗み見た資料で、「学院長が行った禁忌の授業を証言した生徒」として、名前が挙がっていた生徒の一人だ。

つまり、このIさんが偽の証言をした生徒なのだ。

Iさんのことは、俺も知らない訳じゃない。

何よりクラスメイトだし、彼女は俺を練習相手として、よく模擬戦を申し込んできた生徒の一人だ。

上昇思考が高く、何度負けても挫けることなく試行錯誤を繰り返すタイプの子で、彼女の評価を分かりやすく表現するなら「優秀」という一言で片付けられるだろう。

学院長が本当に、自分が優秀だと見込んだ生徒だけを呼び出して授業を行ったなら、呼ばれていても全くおかしくない生徒と言える。

しかし。

俺は、学院長がそんな授業を行うはずがないことを知っている。

つまり彼女の「証言」は、真っ赤な嘘なのだ。

従って彼女は、何らかの理由でシルナさんを貶める為に、偽の証言をしたことになるが…。

シルナさんを陥れた張本人なのだから、どんな悪漢かと思っていたが…まさか自分のクラスメイトとは。

しかも…よりにもよってIさんが。

とてもではないが、そんなことをするような人には見えないのに。

だが…知ってしまったからには、問い詰めない訳にはいかなかった。

「…Iさん。単刀直入に聞く。君は…学院長を告発したよね?」

「!?」

Iさんは、重大な秘密を暴かれたように、目を見開いて狼狽えた。