──────…その頃、牢屋の中では。





「…はぁ…」

…退屈だな。

今までなまじ忙しい毎日を送ってたせいで、閉じ込められてやることがないと、暇で暇で仕方ない。

あの子も…閉じ込められているとき、こんな気持ちだったのだろうか?

「…」

やることがないと、つい思考の沼に陥ってしまう。

私の悪い癖だ。

…逮捕されて、もう二週間以上がたった。

ここまで長く収監されるということは、何かの間違いや手違いで捕まったという線は消えたと考えて良いだろう。

間違えただけで捕まったのなら、今頃解放されているだろうからな。

ということは、やっぱり手違いではないのだ。

一体誰が何の陰謀で私に罪を着せたのかも気になるし、学院の方も心配だ。

でもそれ以上に、気になることがある。

日を追うごとに、事態が深刻化しているような気がして…。








「…私を釈放してくれませんか」

これ以上、黙っていることは出来なかった。

故に、私は大真面目にそう頼んだのだが、私の尋問を担当する担当官は、しばしぽかんとして、それから声をあげて笑い始めた。

「面白い冗談だ。稀代の犯罪者を釈放する司法が、この国にあるとでも?」

当然、そう言われるだろうな。

「保釈金はいくらでも払います。24時間監視をつけてもらっても構わない」

「無理に決まってるだろう。逃げ出して何をするつもりだ?」

「何も。ただ、私が傍についていなければ壊れてしまう子がいるから」

もし、あの子が目を覚ましたときに。

私が傍にいなかったら。

…あの子がどうなってしまうかと考えると、恐ろしくてじっとしていられない。

「釈放が無理なら、あの子を…羽久・グラスフィアをここに連れてきてください」

「却下だ。奴はお前の一番弟子だそうじゃないか。自分が洗脳した部下と、脱走の計画でも企てるつもりか?」

私は脱走の計画など、全く立ててはいない。

ただ…。

「…あの子を…この国を、守りたい。それだけです」

私は、本心からそう言った。

しかし。