正面玄関は、既に阿鼻叫喚の有り様だった。

「ふっざけんじゃねぇ!誰が入れるか!あんたら何の権限があって、うちの学校に土足で踏み入ろうとしてんだ!あぁ!?ぶっ飛ばされてぇのか!?」

「我々は正当な許可を得て来ている!邪魔をするなら、公務執行妨害で貴様も逮捕するぞ!」

「何処の誰から許可を得たってんだぁ!?こちとら許可出した覚えはねぇぞ!不法侵入だろうが!」

「っ、これ以上邪魔をするなら、公務執行妨害で…」

「コームシッコーボーガイコームシッコーボーガイ!お前らオウムか!それしか言えんのかあぁん!?」

…ヤクザの抗争か何かか?

キュレムが大暴走している。

もういっそこのまま、キュレムに任せても良いんじゃないかと思ったが。

本当にキュレムが公務執行妨害で逮捕されたら、シルナは心を痛めるだろう。

仕方がない。

「キュレムちょっと落ち着け。本当に捕まるぞ」

「あぁん!?誰だてめぇ!」

「羽久」

「あ、羽久か…」

思い出してくれたようで何より。

「ここは代わるから。少し下がっててくれ」

「お、おう…」

キュレムを下げて、その代わりに俺が前に出た。

何なんだ。こいつらは。

一体何をしに来た。

「イーニシュフェルト魔導学院学院長代理、羽久・グラスフィアだ。今日は一体何の用だ?」

また、家宅捜索とばかりに学院を荒らしに来たか?

学院を調べたいのなら勝手に調べれば良いが、今は授業中だから駄目だ。

せめて授業が終わってから…と、思っていたら。

それどころではなかった。

「学院長代理と言ったな。では、この学院は本日、この時間を以て、無期限で閉校してもらうことにする」

「…!?」

居丈高な警官が、どや顔で白い紙をぴらっ、と俺に見せつけた。

これには、キュレムも言葉を失っていた。

…閉校…だと?

それはつまり…学院を閉鎖する、ということだ。

…意味が分からない。

一体、何でそうなるんだ。

思い当たる原因は一つだけ…。

「…シルナが…学院長が逮捕されても、学院は関係ない。学院の生徒達にも関係ない」

シルナはシルナで、学院は学院だ。

シルナが逮捕されたからって、学院には関係ないはずだろう。

しかし。

「シルナ・エインリーはこの学院で危険思想教育を行っていたという疑惑がある。思想犯を育成する学校を、野放しにしておくことは出来ない」

勝ち誇ったように、そいつは言った。

よく見たらこいつ、先日俺達がシルナとの面会を求めたときに、寸前で門前払いしやがったシルナの担当官じゃないか。

「この学院そのものが、シルナ・エインリーの企みの拠点になっている可能性もある。あの男が何を隠しているにせよ、この学院は閉鎖し、生徒は全員故郷に帰す。イーニシュフェルト魔導学院は、今日で終わりだ」