シルナが不在の為、イーニシュフェルト魔導学院の教員達は、俺を除いて一人もいなくなってしまった。

その為、現在授業を代わっているのは、元シルナの教え子で、聖魔騎士団魔導部隊に所属するOB、OGの魔導師達である。

授業に穴を開ける訳にはいかないと、なんとかシルナの代わりを務めてはいるものの…学院そのものが精彩を欠いているのは、誰の目からも明らかだった。

生徒達には、「このような状況ではあるものの、まだ裁判も行われておらずはっきりしたことは分かっていないので、憶測でおかしな噂を信じたりはせず、イーニシュフェルトの生徒として毅然とした態度で授業に臨むように」と徹底しておいた。

ようは、変な噂に惑わされず、いつも通り勉強しろよお前ら、ということである。

まぁ、この状況で何も気にせず勉強に励めるだけの鋼のメンタルを持った生徒が、イーニシュフェルトに何人いるのかは知らないがな。

とにかく、非常時こそ、敢えて通常通りの行動をすることが大切だ。

そう思って、俺は授業に臨んでいた…のだが。

それを嘲笑うかのように、イーニシュフェルト魔導学院に、不届き者共が土足で踏み入ってきた。

「グラスフィア先生!すぐに来てください」

「あ?」

授業中だった俺のもとに、学院を手伝いに来てくれていた卒業生のユリーシャが、慌てて教室に飛び込んできた。

「どうした?」

「正面玄関に…警察の方達がたくさん来ていて…」

「…!?…ユリーシャ、ここ頼む」

「は、はい」

テキストをユリーシャに押し付けて、俺はすぐに教室を飛び出した。

猛烈に、嫌な予感がした。