吐月と話せば、何かしら情報を得られると思った。

確かに情報は得られたが、とても芳しいものではなかった。

…むしろ、余計気が滅入るだけだな。

「…分かった。ありがとう、吐月」

「…羽久さん」

吐月は、静かにそう言った。

「ん?」

「俺は、学院長が逮捕されるようなことをする人だとは思っていません。だからこれは、間違いなく冤罪です」

その通りだ。

考えるまでもなく簡単に分かることなのに、それが分からない馬鹿が、いつまでもシルナを閉じ込めているのだ。

「俺は学院長に命を救われた身。学院長を助け出す為なら、俺は何でもします。役に立てることがあったら…何でも言ってください」

「…」

じゃあ警察を全員殺してきて、と言えば大真面目に頷きそうな勢いだった。

確かにそうすれば楽なのかもしれないが、シルナは当然、それを望まないだろう。

だから。

「ありがとう。…恩に着るよ」

「いえ…。恩を返しているのは俺の方ですから」

状況は何一つ良くなってないが。

それでも、シルナの味方をする人間がまた一人増えたのだと思うと、少し気が楽になった。