「彼にかけられた嫌疑については、私も聞きました。それだけに信じられないのです。彼がそんなことをするはずがありませんから」

「同感です」

シルナのことを少しでも知ってる人なら。

あいつがそんな犯罪を行うはずがないなんて、考えるまでもないのに。

何も知らない奴が、ギャーギャーと騒いでいるだけなのだ。

「そう、間違いなく、彼は冤罪…。それは分かっているんです。でも…」

「…でも?」

「…『彼がそんなことをするはずがない』。彼を無実だと証明する証拠は、この言葉しかないんです」

フユリ様は、悔しそうに歯噛みした。

…何だって?

「シルナが有罪だと証明する証拠だって、ないじゃないですか」

「いいえ、証拠はあるんです。私も確認しましたから」

「…証拠?」

何なんだ、それは。

「まずは、イーニシュフェルトの生徒の証言です。人権保護の為に名前を明かすことは出来ませんが、現役のイーニシュフェルトの生徒が、証言しています」

「は…!?」

「学院長が自ら授業を行って、『禁忌の魔法を使い、人間を滅ぼして魔導師のみの国を作ろう』とけしかけたと」

ど、こ、の…馬鹿な生徒が、そんな証言をしたんだ。

「その生徒の妄言です」

「証言したのは一人の生徒ではありません。学年を問わず、複数の生徒が同じような証言をしています」

「…!?」

「更に学院長は、『この計画を学外の誰かに話すことは一切禁じる。もし他言した場合、退学処分にする』と脅していたとも。他言したことがバレたら、自分も退学処分にされる、と涙ながらに語っていたそうです」

…そんな。

それじゃ、シルナは完全に悪役じゃないか。

「それだけではありません。学院長室を捜索したところ、許可されていない禁書が数冊、隠されていたのを押収しています」

「はぁ…!?シルナはそんなもの、部屋には置いてないはずじゃ」

「実際に見つかっていますから。それに、危険思想について書かれた論文らしき原稿も複数、見つかっています。全てシルナ・エインリーの筆跡と合致しています」

複数の生徒の証言?

許可されていない禁書?

危険思想の論文?

それが…シルナが有罪だと言う証拠だってのか?