ほんの、数年前まで。

私は自分に娘が出来るなんて、思ってもみなかった。

と言うか、そもそも自分に家族が出来るとも思っていなかった。

誰が、私を家族になんてしてくれるだろう。

そんな酔狂な人がこの世にいるはずがない。

そう思い込んでいた。

学院長は、「いつか、ありのままの君を受け入れてくれる人がいるよ」と言ってくれたけど。

私はその言葉を、単なる気休めとしか思っていなかった。

誰にも分からない。誰かに分かるはずもない。

私の孤独が。苦しみが。この疎外感が。

私は生きている限り、人に遠慮し、頭を低くして、出来るだけ目立たないように、ひっそりと暮らしていかなくてはならない。

そのはずだった。

その覚悟はしていた。

そんな私が、今では聖魔騎士団の団長と結婚して、その間に子供までいる。

私自身も、聖魔騎士団で副団長を務めている。

暗いものになるはずだった、私の運命。

それを変えてくれたのは、あの素晴らしい学舎…イーニシュフェルト魔導学院だった。