「お前…いい加減に…!」

キュレム共々ぶちギレそうになったところを、ルイーシュが止めた。

「やめましょうよ。下らないですよこんなこと。今ここでこいつをぶっ飛ばしたから、何になるんです?俺達もまとめてブタ箱に叩き込まれるだけでしょう」

…そうだった。

これじゃ、ミイラ取りがミイラになるのと変わらない。

シルナだって…それは望まないはずだ。

ルイーシュの冷静さのお陰で正気に戻ったものの…しかし、ルイーシュとて、怒りの沸点が高い方ではない。

ゴミを見る目で、担当君を睨み付けた。

「憐れなものです。この人達は、自分がどんでもない間違いを犯していることに気づいていない。後で自分達の目が節穴だったと知ったとき、どんな滑稽な顔をするのか、今から楽しみですよ」

「…」

担当官は、ふん、と鼻を鳴らした。

俺達の言葉など、彼にとっては負け犬の遠吠えなのだろう。

「会えないなら仕方ない。戻りましょう」

「ルイーシュ、でも…」

「ここでゴネても無駄ですよ」

「…分かったよ」

キュレムも、仕方なく諦めた。

俺も…後ろ髪を引かれる思いだったが、何とか堪えた。

…シルナが無罪だってことは分かってるのに。

俺達は、それを証明する手立てがない。

そもそも、こいつらがそれを聞いてくれなければ、相手にしてくれなければ、話にならないのだ。

シルナの教え子というだけで、俺達は完全にシルナの手駒だと思われている。

そんな人間の言葉を、誰も信用したりしない。

…いや、待て。

…あの人なら。

「だぁぁっ!クソッ!胸糞悪いっ!何だよあいつ!」

建物を出るなり、キュレムは空に向かって叫んだ。

おいおい、聞こえるぞ施設の中に。

「本当気分悪いですね。何が『要注意リストに載せておく』…ですよ。むしろ何でまだ載せてなかったんですか。載せれば良いじゃないですか勝手に」

変な方向にキレてるルイーシュである。

その気持ちは分かるが…。

「学院長大丈夫かなぁ。元気してれば良いけど…」

「これから俺達どうします?学院長の冤罪を晴らすどころか、様子を確かめることすら…」

「…王宮に行こう」

俺は、そう提案した。

「は?王宮?」

「あの人に…話を聞いてみるんだよ。何か知ってるかもしれない」

二人共、それを聞いてハッとした。

こういう手段はあまり好きではないが、この際、手段を選んではいられない。