「失礼だぞお前!久し振りに人間界に来たと思ったら。俺様を誰だと思ってる!」
「え、いや、だって見るからに弱そ、」
「こらこら羽久。人を見た目で判断するものじゃないよ」
そりゃ確かに、見た目はちょっとあの…。弱そうに見えなくもないけど。
でも、弱そうなのは見た目だけなのだ。
「失礼を致しました、ベルフェゴール様」
私は羽久の代わりに謝り、魔物の前に膝をついた。
この魔物の名前は、ベルフェゴール。
魔物の中でも、最上位に位置する…冥王クラスの魔物なのだ。
「…やい!俺様を喚んだのはお前か?」
「えぇ…そうです」
「魔力はすこぶる不味いが、血が美味かったから来てやったが…。この血、本当にお前の血か?」
…さすが、鋭いな。
「いいえ、この血は…私のものではありません」
「…」
私がそう答えると、ベルフェゴールの小さな体躯から、溢れ出さんばかりの殺気が迸った。
「…召喚に使う血は、召喚者本人のものであることが掟。違う人間の血を使うなど…大罪に値する」
「承知の上です」
「ルール違反には、罰を与えなければならん。死を以て…償ってもらう」
爆発的に膨れ上がった殺気が、私の前に降りかかった。
「お前…!」
羽久が、ベルフェゴールに杖を向けた。
しかし。
「…と、言いたいところだが…。お前は無理だな」
ベルフェゴールは、溜め息混じりに脱力した。
膨れ上がっていた殺気が、一気に霧散した。
いきなりの態度の急変に、羽久は拍子抜けしていたが。
私は、そうなると思っていたから驚かなかった。
「賢明なご判断、感謝します」
「それで?俺様を喚んだ理由は何だ?それから…その血は、誰のものなんだ?」
「単刀直入に言います、ベルフェゴール様…。あなたには、この血の持ち主と契約してもらいたい」
「…」
ベルフェゴールは、パタパタと羽を動かして、
「…その血、今まで飲んだことがないくらい美味かった。だから、この血の持ち主と契約するのはやぶさかじゃない」
「そうですか」
それは何より。
「でも…契約者本人がいないのは何故だ?契約者は何処にいる?」
「契約者は今、心ない悪しき魔物に取り憑かれ、殺戮を強要されています」
「…」
それを聞いたベルフェゴールは、明らかに気分を害したようだった。
「…契約者を無理矢理乗っ取って、望まない殺戮を強要するなんて…魔物の風上にも置けねぇ。最低のクズ野郎だ」
「私もそう思います。だから、今からその魔物を、彼の身体から引き剥がす」
「…」
「その後に、あなたは彼の身体に入って欲しい。彼と契約して…彼を助けてあげて欲しいのです」
上手く行くかどうかも分からない、これは賭けだ。
上手く行かなければ、吐月君は死んでしまう。
でも…放っておけば、いずれにしても吐月君は、雪刃を引き剥がした瞬間に死んでしまう。
雪刃を引き剥がさなければ、既に吐月君は死んだようなものだ。
だから、一縷の望みに賭ける。
「…良いぜ。やってやろうじゃないか…。そいつの魔力は、この血と同じくらい美味いんだろうな?」
「それはもう…味は保証しますよ」
何せ、あの雪刃が何千年も執着して、離れなかった身体だからな。
魔物にとっては、正に三ツ星クラスの味に違いない。
「え、いや、だって見るからに弱そ、」
「こらこら羽久。人を見た目で判断するものじゃないよ」
そりゃ確かに、見た目はちょっとあの…。弱そうに見えなくもないけど。
でも、弱そうなのは見た目だけなのだ。
「失礼を致しました、ベルフェゴール様」
私は羽久の代わりに謝り、魔物の前に膝をついた。
この魔物の名前は、ベルフェゴール。
魔物の中でも、最上位に位置する…冥王クラスの魔物なのだ。
「…やい!俺様を喚んだのはお前か?」
「えぇ…そうです」
「魔力はすこぶる不味いが、血が美味かったから来てやったが…。この血、本当にお前の血か?」
…さすが、鋭いな。
「いいえ、この血は…私のものではありません」
「…」
私がそう答えると、ベルフェゴールの小さな体躯から、溢れ出さんばかりの殺気が迸った。
「…召喚に使う血は、召喚者本人のものであることが掟。違う人間の血を使うなど…大罪に値する」
「承知の上です」
「ルール違反には、罰を与えなければならん。死を以て…償ってもらう」
爆発的に膨れ上がった殺気が、私の前に降りかかった。
「お前…!」
羽久が、ベルフェゴールに杖を向けた。
しかし。
「…と、言いたいところだが…。お前は無理だな」
ベルフェゴールは、溜め息混じりに脱力した。
膨れ上がっていた殺気が、一気に霧散した。
いきなりの態度の急変に、羽久は拍子抜けしていたが。
私は、そうなると思っていたから驚かなかった。
「賢明なご判断、感謝します」
「それで?俺様を喚んだ理由は何だ?それから…その血は、誰のものなんだ?」
「単刀直入に言います、ベルフェゴール様…。あなたには、この血の持ち主と契約してもらいたい」
「…」
ベルフェゴールは、パタパタと羽を動かして、
「…その血、今まで飲んだことがないくらい美味かった。だから、この血の持ち主と契約するのはやぶさかじゃない」
「そうですか」
それは何より。
「でも…契約者本人がいないのは何故だ?契約者は何処にいる?」
「契約者は今、心ない悪しき魔物に取り憑かれ、殺戮を強要されています」
「…」
それを聞いたベルフェゴールは、明らかに気分を害したようだった。
「…契約者を無理矢理乗っ取って、望まない殺戮を強要するなんて…魔物の風上にも置けねぇ。最低のクズ野郎だ」
「私もそう思います。だから、今からその魔物を、彼の身体から引き剥がす」
「…」
「その後に、あなたは彼の身体に入って欲しい。彼と契約して…彼を助けてあげて欲しいのです」
上手く行くかどうかも分からない、これは賭けだ。
上手く行かなければ、吐月君は死んでしまう。
でも…放っておけば、いずれにしても吐月君は、雪刃を引き剥がした瞬間に死んでしまう。
雪刃を引き剥がさなければ、既に吐月君は死んだようなものだ。
だから、一縷の望みに賭ける。
「…良いぜ。やってやろうじゃないか…。そいつの魔力は、この血と同じくらい美味いんだろうな?」
「それはもう…味は保証しますよ」
何せ、あの雪刃が何千年も執着して、離れなかった身体だからな。
魔物にとっては、正に三ツ星クラスの味に違いない。