──────…私の光魔法は、予想通り、効果覿面だった。

「うぅ…うっ…」

吐月君は、蹲って苦しみ始めた。

苦しいだろうね。もう少し、頑張って。

雪刃が闇属性の魔物なら、これで出ていくはず。

「うぅっ…ぐ…!」

「…シルナ…!これ、本当に大丈夫なのか!?」

酷く苦しみ、呻き声をあげる吐月君に、羽久が声を荒らげた。

確かにこれだけ見たら、ただ吐月君を苦しめてるようにしか見えないだろう。

でも。

「大丈夫。苦しんでるってことは、魔法が雪刃に効いてる」

今頃、長年住み着き続けた楽園を、突然閉め出されそうになって…慌てていることだろう。

だが、私に目をつけられたのが運の尽き。

上手く行けば、このまま…。

…と、思ったその時。

「あっ、まっ、やめ…駄目!」

「吐月君!?」

吐月君の中身が…「入れ替わった」。

目が血走り、鬼のような形相になった吐月君…いや、雪刃が。

両手に氷の刃を出現させ、私に向かってそれを投擲した。

「シルナっ!!」

羽久が、咄嗟に時間を止め、氷の刃を叩き砕いた。

「羽久…!ありがとう」

「どうなってんだよ!吐月は…」

「いいや…もう吐月君じゃない」

…どうやら。

私は少々、この化け物を甘く見ていたかもしれない。

吐月君の皮を被った化け物…雪刃は、ゆらり、と私達の前に立ちはだかった。

「…おのれ…」

その声は冷たく、まるで地獄の底から響いているようだった。

「魔導師風情が…!」

「…君が、雪刃か」

禍々しい魔力。凍てついた殺気。

成程…吐月君があんなに怖がっていた訳だ。

こんな化け物が身体の中にいたら、誰だってああなるだろう。