─────…学院長が帰った後。

私はミライさんと遊んであげた。

姿形は、大人の身体の羽久さんだけど。

その中身は、まだ十歳かそこらの少女である。

私のことをとても好いてくれているらしく、出てきたときはいつも私と遊びたがる。

とても可愛く、妹のようで、私はいつも時間が許す限り遊んであげるようにしている。

今日も一通り遊んであげると、満足したのか、また羽久さんに戻った。

その羽久さんが学院長のもとに戻った後。

私は、アトラスさんと共に帰宅した。

それから。





「…アトラスさん。私、二時に来てくださいって言いましたよね?」

「…はい」

「…あなたが来たの、何時でした?」

「…三時…四十五分くらい…」

「ほぼ四時ですよね?二時間も遅刻するなんて…」

「…済みませんでした」

私の前に膝をつき、頭を下げるアトラスさん。

天下無双、百戦錬磨の聖魔騎士団団長。

しかし唯一頭が上がらない相手。それが妻。

この私、シュニィ・ルシェリートである。

「全く…。聖魔騎士団の団長ともあろう者が二時間も遅刻するなんて…。そんなことでどうするんです。時間を守れないようでは、部下もついてきませんよ。分かってます?二時間ですよ二時間。二分じゃないんですよ?」

「はい…」

「しかも、『禁忌の黒魔導書』が紛失したこの状況で…。ちょっと気を抜き過ぎではありませんか?あなたがそんなようでは、騎士団全体が…」

と、説教がエスカレートしかけた、そのとき。

「…おとうしゃま!」

可愛らしいパジャマに身を包んだ小さな女の子が、部屋の中に飛び込んできた。