俺が突然化け物に取り憑かれたことで、村は騒然となった。

両親は何とか俺の中の化け物を追い出そうと、村の占い師や祈祷師を呼んできた。

不思議な呪文を唱えられたり、何時間も座禅を組まされたり、おかしな薬を飲まされたり、色々と試したが、何も効果はなかった。

今思えば、あれは魔法でも何でもなく、ただのまじないに過ぎなかったのだ。

本物の魔物である「彼女」には、痛くも痒くもなかった。

そんなある日。

俺がおかしな怪物に取り憑かれたことが、隣村に知れ。

噂を聞き付けた隣村から、遥々占い師を名乗る女性がやって来た。

サヤノという名前だった。

彼女は、家の中で震えていた俺のもとにやって来て、笑顔で手を差し伸べた。

「大丈夫よ。私が、あなたを助けてあげる」

その笑顔があまりにも優しくて、穏やかで。

この人は、本当に俺を助けようとしてくれてるんだ、と思った。

実際、彼女は本当に俺を助けようとしてくれていた。

俺は、震えながらその手を取った。

助けて欲しい、と思った。

誰かに助けて欲しいと。

だから、俺も手を伸ばした。