脳裏に甦るのは、見渡す限りの血の海と、死体の山。

引きちぎられた死体の目が、虚ろに俺を見つめていた。

「お前のせいだ」って。

…そう言われた気がした。




「シルナ…。『本当の殺人鬼』って…。どういう意味だよ?こいつの中に誰かいるのか?」

「そう、いるんだよ。彼じゃない、別の化け物が。その化け物が彼に寄生して、利用して、少女を殺させてるんだろう」

「はぁ!?」

膝が、がくがくと震えていた。

知られてしまった。知られてしまった。

「彼女」の存在を、他人に知られてしまった。

どうする?どうすれば良いんだ?

今すぐこの人を殺す?

それとも、今すぐここから逃げて、別の時空に行く?

それで逃げ切れるとは思えない。この人達が本当にルーデュニアの魔導師なら、この人達だって時空移動は可能なはず。

見つかってしまった時点で、逃げ場はない。

「君の中にいる化け物…その魔物、いつからいるの?どうして、君に寄生してるのか分かる?」

「あ…あぁ…」

「大丈夫。落ち着いて、ゆっくり話して」

「…!」

俺は一歩、二歩と後ずさって、必死に行きを整えた。

落ち着け、落ち着け、落ち着け。

まだ殺されると決まった訳じゃない。

「あ、あなた達は…何をしに来たんだ。俺の中に『彼女』がいることを知って…それで俺をどうするつもりなんだ。殺すのか?」

もし…もしそうなんだとしたら。俺は。

「いいや、殺さないよ…。私達は、君を助けに来たんだ」