暗くなってから、俺達はDちゃんの喫茶店を出た。

一人になって、ようやく手のひらの中に押し込められた小さな紙を確認した。

紙には、住所が記載されていた。

…ここに来い、ってことか?

言っても良いものかどうか、俺は悩んだ。

だが、もし行かなかったとしても…彼らは、また会いに来るだろう。

それに俺は、彼らが何を、何処まで知っているのかを確認しなければならなかった。

「…」

このことが、もしもバレたら。

そう思うと恐ろしくて堪らなかった。

震える足で、俺はそのまま住所の場所に向かった。

駅の近くにある、ビジネスホテルだった。

…入っても良いのか?ここに。

恐る恐るエントランスに足を踏み入れ、きょろきょろと辺りを見渡した。

もしかして、部屋を取って、そこで待ってろってことなのか?

住所だけじゃ、いまいち分からな…、

「ランディス君」

エントランスのソファに腰掛けて、俺にひらひらを手を振る男性。

先程、喫茶店にやって来たあの人である。

「ごめんね、呼びつけちゃって」

「…あなた、何を知ってるんですか」

俺はまず最初に、そう尋ねた。

一番にそれを確かめなければならないと思った。

しかし。

「落ち着いて、ゆっくり話そう。お互いに聞きたいことは山ほどあるだろうからね。部屋を取ってあるから、そこで」

「…」

…長居はしたくなかった。

早く話を済ませて、早く戻りたかった。

しかし…向こうは、俺を簡単に帰らせてくれる気はなさそうだった。