「まず、先日お話した通り…王宮書庫に封印してあったはずの指定禁書七冊…『禁忌の黒魔導書』が、行方不明になったそうです」

「…やっぱり、なくなっちゃってたの?」

「はい」

「…そっか」

シルナも、アトラスも、俺も。

これには、頭を抱えていた。

禁書というのは、魔導書の中でも、特に禁忌とされる魔導理論が書かれた本だったり。

魔導書自体が意思を持っていて、人に取り憑いて悪事を働いたりする、要するに出回ってもらっちゃ困る魔導書の総称である。

そして『禁忌の黒魔導書』というのは、ルーデュニア聖王国に多数ある禁書の中でも、特に危険なものとして指定されていた七冊の禁書を指す。

これら七冊の禁書に書かれた禁忌の魔法を使ったとき…この世に暗黒が訪れる、と言われている。

その為、普段は王宮の書庫に、厳重に封印されているはずなのだが…。

ある日突然、それらが忽然と姿を消してしまった、そうな。

誰かが持ち去ったのか。

それとも、禁書が自ら、何らかの手段を用いて封印を解き、逃げてしまったのか。

理由は分からないが、『禁忌の黒魔導書』の紛失は、聖魔騎士団としても見過ごせない。

あの魔導書を使える人間なんて、そうそういるものではないけれど。

もし誤った扱い方をする者の手に渡れば、本当に恐ろしい事態を引き起こしかねない…ということで。

こうして、シュニィが陣頭に立って、禁書探しを進めている。

…の、だが。

「エリュティアが探知魔法で探してくれましたが、どうやら禁書は一冊ずつ、様々な時空に飛んでいるようです。その上で…フユリ女王陛下から、勅命です」

「フユリ様から?」

「はい。『禁忌の黒魔導書』を一冊残らず回収し…再度封印し直すように、と」

「…!」

…女王陛下、自ら勅命を下されるとは。

これはいよいよもって、事態は急を争うらしいな。

そうだというのに、二時間遅刻したこの人達って一体。

呑気なことしてる場合じゃな、い…、