「…うーん…」

分かることを並べてみたのは良いものの。

ただ事実を並べただけで、結局そこに至った理由が何も分からないんだから。

何も分かってないのと同義だよなぁ。

「もううんざりしてきた。せめてネカフェはもう勘弁…いや、シルナと同室は勘弁したい。別室借りたい」

「私が悪いみたいに言わないで」

八つ当たりでしょそれ。

…よし、仕方ない。

「こうなったら…羽久。最終手段だ」

「あ?何?」

「警察庁に忍び込んで、捜査の進捗状況を確認しに行こう」

「…」

羽久は、真顔でじっと私の顔を見つめた。

しばし無言で見つめ合った後、羽久はくるりと後ろを振り向き。

「…あ、もしもし認知症外来ですか?予約お願いします。ちょっとうちのお爺さん、ボケが酷くなってて…」

「認知症じゃないから。正気だから!電話しないで!」

大体、何処に電話してるのさ君。

勝手に予約取らないで。行かないから。

「警察に忍び込むって…何考えてるんだよ」

「何って言われても…。もうそうするしかないかなって」

「そりゃ確かに…一理あるけど…」

この事件は恐らく、私達が思っている以上に根が深い。

世間に報道されていないだけで、警察だけが抱えてる情報もきっとあるだろう。

だから、それを調べに行く。

「…これ以上、ネットで真偽の分からない落書きを漁っても意味がない、か…」

「そういうこと。ね?行ってみよう」

「…後で、イーニシュフェルト魔導学院の生徒に噂流しとこ。学院長が警察に忍び込んでたって」

「やめて生徒には言わないで!」

良い子に育ててるんだから!学院長がこんな悪いことしてると知ったら、皆悪い子になっちゃう。

警察にこっそり潜入なんて、教育者としてあるまじき犯罪だが…。

今回ばかりは、目を瞑って頂きたい。