「あぁ、イライラする…」

「落ち着いて羽久。犯人見つからないからってそんなイライラしないで」

「勘違いするな。イライラしてるのは犯人が見つからないことじゃなくて、折角この国まで来たのに、シルナとネカフェで寝泊まりしなきゃならないことだよ」

酷い。

私とのネットカフェ、そんなに嫌?

「折角こんなところまで来たのに、何でまたネカフェなんだよ」

「何でって言われても…。仕方ないじゃない。この国で事件が起きてることは特定したけど、犯人が分からないんだから…」

仕方なく、また情報収集の為にネカフェ巡りをしているという次第である。

「もうネットは意味ないよ。書いてあることめちゃくちゃ過ぎ」

毎月のように起こる猟期殺人に、ネットの人々は大騒ぎであった。

事件に関する情報は、警察庁から定期的に報告されているけれど。

それはネットを見なくても、新聞を読めば分かること。

ネットにしか落ちていない情報を、少しでも拾おうとしてここにいるのだが…。

羽久の言う通り、書いてあることはめちゃくちゃだった。

社会から見離された犯罪者予備軍が、とうとう犯行に手を染めたんだろうとか。

これは何百年も前の吸血鬼が復活して、その吸血鬼の仕業なんだとか。

「いや実は俺ですww」なんて、草生やしてる書き込みも見つけた。

事件が大きくなっているが故に、こういうデタラメ情報が蔓延るようになってしまい。

最早混沌と化してきている。

「何を信じたら良いのやら、さっぱり分からん。いっそ本当に吸血鬼のせいなんじゃないの?」

「いや…魔導師ではあるんだろうけど…吸血鬼ではない…のかな?」

「自信なくすな」

だって、私にも分かんないんだもん。

「よし、羽久。とりあえず、分かんない分かんない言っててもしょうがないから、今分かっていることを並べてみよう」

「今分かってること?」

「そう。まず、連続殺人事件はこの国で起きてる。それも、この県内で。それから、事件は定期的に…約一ヶ月ごとに起きてる」

「でも、一人目と二人目は同じ日だったよ。県も違うし」

確かに、それはちょっとイレギュラーだが。

「三人目以降は一月につき一人だから、一応毎月ごと、と考えておこう」

もしかしたら、遺体が見つかっていないだけで、他にも犠牲者がいるのかもしれない。その可能性はある。

が、その可能性も今は保留。

「殺されるのは必ず、七歳以下の女の子。出身地や血液型は全部バラバラ」

もしかしたら、私達が知らない、犯人しか知らない共通点がある…のかもしれない。

「殺害方法は全員同じ。まず喉をナイフで一突きして殺し、その後心臓を抉り出してる」

「で、その抉り出された心臓はいずれも見つかっていない、だったな」

「その通り」

一体何処に捨てたのか、それとも何処かにコレクションしているのか。

いずれにしても悪趣味だ。

「そして、犯人は相当実力を持った魔導師であり、様々な時空を移動しては、同じ犯行を繰り返してる」

これは、私達しか知らない情報だ。

一体何の目的があって、こんなことをしているのか。

それが分かれば、話は早いのだが…。