それから数時間。

シャワーを浴びた羽久が、横になってしばし仮眠を取り。

目を覚ましてから、また私と交代してくれた。

私も同じくシャワーを浴びて、毛布を借りて仮眠を取ることにした。

それじゃ羽久お休みー、と横になって、ほんの一時間ほどたったとき。






「…!これだ!」

「…zzz…」

「おいこら、起きろロリコン学院長!」

「…んー…?」

「起きろって言ってるだろ馬鹿!」

「あぶっ」

ぼすんっ、とクッションを顔面に投げられ。

私は、無理矢理起こされた。

「いたたた…。何するの羽久…」

丁度、良い気持ちで寝かけていたところだったのに…。

「見つけたんだよ!これ!」

「ふぇ?」

「いつまで寝惚けてんだ、このボケ老人は!」

ベシッ、と頭をはたかれた。

「いたぁ!ひっど…!」

イーニシュフェルト魔導学院の学院長である私の頭を、こんなに容赦なくぶっ叩けるのは。

ルーデュニア聖王国広しと言えども、羽久くらいのものだよ。

でも、お陰でちょっと目が覚めた。

「何?何々?どうしたの?」

「これ見て。つい二時間前の記事」

「うん…?」

画面を覗き込むと、そこには某国で起きた、女児殺人事件のニュース記事。

「◯月◯日に、幼稚園から一人で帰っていた六歳の女の子が行方不明になり、翌日未明に近くの商店街のゴミ箱から遺体が発見…。同じ日に、母親と出かけ、母親が目を離した隙に行方不明になっていた女の子が、数日後遺体となって海で発見される…。どちらの遺体も、首に深い刺し傷…。更に、遺体から心臓がくり抜かれてる…!?」

…これって。

「…ルーデュニアで起きた殺人事件と、手口が全く同じだ」

「あぁ」

ということは…まさか。

この時空が…ビンゴだった、ってことか?

「つい最近の事件だ。丁度犯人も、ここに来たばかりだったんだろう…。急いで、俺達も向かおう」

羽久は、急いで荷物を片付けながらそう言った。

そうだね。すぐに向かった方が良い。それは分かってる。

だが。

「うん、羽久…あのさ」

「あ?何?」

「無理矢理起こされて物凄く眠いから、あと一時間くらい寝かせ…」

「アホか起きろ!命懸かってんだぞ馬鹿。貴様の睡眠不足など知ったことか!倒れるまで働け!」

「酷い!」

羽久に尻を蹴られ、私は無理矢理眠い目を擦って、ネットカフェを後にした。