荷物が届いた。
 宛先も何も書かれていない、両手で収まるくらいの真っ白い箱。
 それはずっしりと重く、箱から白檀の香りがもれている。

 俺は少しためらいながら、その箱を片手で持ち、もう片方の手でそれを開けた。

 その箱の中には、干からびた内海大樹の頭が入っていた。

「内海!?」

 思わず箱を落とすと、緩衝材として使っていた大量の霞草が舞う。
 内海の頭は一回バウンドしてそれからコロコロと転がり、こちらをじっと見ていた。
 そしてあろうことか、口を開いて言葉を発した。

「悠。合格おめでとう」

 チーーーーーーン。

 鈴の音で我に返った。
 真冬だというのに額から変な汗が流れ、ハンカチで急いで拭う。

 今は葬式の真っ最中でありながら、別のことを考えていたようだ。

 無理もない。俺は取り返しのつかないことを言ってしまったのだから。

 ふと、隣にいる親友の友瀬賢志を見る。泣いているのではないかと顔を伺うと、彼の顔は真っ青になって何か思いつめたように俯いていた。そして俺と同じく変な汗を流している。

 内海の干からびた頭が、脳内をよぎる。

 今度は友瀬が、落ちた内海の頭を両手で持ち上げている。
 彼は静かにこう言った。

「そんなに怖がるなよ」

 それから彼は、ふふっと微笑んだ。

「悠。これを一緒に、隠そう」

 俺たちは葬式を終えて霊柩車を待っていた。
 友瀬は内海の頭を持っておらず、代わりに彼の遺影を持っていた。

 小柄で目が大きくて、天然パーマの俺の親友。
 内海大樹。
 内海大樹が死んだ。
 俺たちはその葬式に参加していた。

 涙を流すことなく、それどころかお互いに変な汗を流して。