私には好きな人がいる。その人は同じ会社の同僚で、容姿端麗で仕事もできる素敵な男性。女性社員のほとんどが彼に夢中だった。そんな中、彼は同僚の私を誰よりも気にかけてくれていて、彼も私のことが好きなのかもしれない。そんな淡い期待を抱いていた。
「好きです。付き合ってください」
「私も好きです!よろしくお願いします!」
好きな人と過ごす時間はすごく幸せで、彼とずっと一緒にいたい。そう思った。だから、私がこれ以上欲張らないためにも。
「お願いがあるの」
「うん。どうしたの?何でも言ってよ」
「私のことを殺してほしいの。死ぬときは、好きな人に殺されたいから」
「冗談だよね?」と笑う彼に、包丁を手渡す。
包丁を握る彼の手を取り、私の胸に包丁を向ける。
「やめろ!そんなことできるわけがないだろ!」
「できない?……そっか。じゃあ、さようならだね」
彼から包丁を奪い取り、私は振り上げた包丁を彼の胸に思い切り突き刺した。
何度も、何度も。彼の息が絶えるまで、何度も刺した。
「あーあ……この人も、ダメだった」