全員を送り届けた。

帰り道、沈黙を破ったのは翔先輩だった。

「俺、ずっと探してたけど、怖くて。
ずっと怖くて、もういなかったらと思うと怖かった。」

初めて聞いた弱音。

人は初めてに弱いのだろうか。

「だから、あいかも、さやも、ほんとに良かったと思ってる。生きててくれてありがとう。帰ってきてくれて。」

今までで1番優しくて、でも、小さくて、情けない声だった。

でも、それが愛おしくて、ずっと離したくなくて、気づいたら袖を掴んでいた。

「私、嬉しかったの。翔先輩が紗矢と思って、私に話さなくてもね。私に話しかけてくれるのが嬉しかったの。ほんとにありがとね。」

デコピンが飛んできた。

「痛いなぁもーう。」

「先輩には敬語な?」

「ふふふw」

私達は手を繋いで、アジトへと足早に帰った。

誰かにつけられたり、

襲われたら面倒だし、

今は全員疲れ切っているから。

ドアの前で先輩は一旦とまって

「ちょっと待って」
そう言ってドアを開け、自分だけ入った。

手を大きく広がして、
「おかえり、さや。おいで、はる。」

涙で視界が遮られた。

「せんぱい。探してくれてありがと。」

精一杯の笑顔で言った。

そして、あの日の、2年前のことをゆっくりと話し始めた。

あいかに怒られるかなあ。