と。

『ユキガ フリハジメマシタ』とロボットが外を見て言った。

そういえば今夜は結構降るって天気予知報道で聞いた。

「泊まってく?」
「んー、今日は帰る。やりたいこともあるしね」

盗聴とか盗聴とか盗聴とか。

傘持ってきてないし、雪が酷くなる前に帰らなくてはと立ち上がると、小雪も立ち上がって玄関まで送ってくれた。

「哀、今更だけどさ。俺たちの問題に勇気出して踏み込んできてくれてありがとう」

踏み込んで怒られるのではなく、お礼を言われるとは思っていなかったので、一瞬何も答えられなかった。

「……いつか、哀の問題にも関わらせてもらえたらいいな」
「えー、私に問題なんかあるかなぁ?今月はエロ本買うための金がないとか?」
「哀、自分では気付いてないかもしんないけど、何かに常に苦しんでるように見える」

…………え?それは、前の小雪じゃ。

「辛くなったら、せめて俺くらいには頼ってね」

……ああ、そうか。

私が小雪に惹かれたのは。


関わりたいと思ったのは。


似てると思ったからだ。自分と。


煙草を吸いながら、罪悪感を抱えて息苦しそうにしている小雪のあの日の表情を見て、笑顔にしたいと思ったのは……小雪の姿に自分を重ねて、助けたいと感じたからだ。

……なんて甘ったれた精神だ。心のどこかで私は、この罪悪感から逃れたいと思ってるんだ。

「……うん。ありがとう小雪」

部屋を出る時、小雪の顔をまともに見れなかった。

部屋を出た後、真っ黒な空を見上げて白い息を吐いた。


――ごめん小雪。そんな日は一生来ない。


私には罪がある。

この罪は一生、誰にも言うつもりはない。

辛いなんて言う資格、私にはないのだ。


あの時。国にとって泰久にとって、多くの人にとって大切なあの人を―――殺したのは私なんだから。