結局、雪乃はその後ずっと泣きっぱなしだった。

残り時間が近付き、雪乃が必死に涙を止めようとし始めたので、手伝わなければと思い変顔をした。

それまで緊迫した空気だったからか思った以上にウケて、雪乃は私の変顔効果で泣き止んだ。

ティッシュを貸したり背中を擦ったりすることしかできなかったけど、それでも雪乃は他人に話せたことでいくらかは楽になったようだった。

最後はEランク寮の外まで雪乃を見送りに行った。

「オレみたいな関係ない人間が勝手に踏み込んだのに、素直に打ち明けてくれてありがとう」
「いえ……お礼を言いたいのはこちらの方です。見苦しいところをお見せしてすみませんでした」

ぺこりとお辞儀をしてSランク寮へ向かう雪乃の華奢な背中を眺めていると、ふとその体が私の方に振り向いた。

「哀様は、不思議な人ですね」
「……まー確かに変人ってよく言われる」
「ふふ、そういうことじゃありません。不思議な力を持った人だと思います。超能力じゃないけど、でも、もっと凄い力」

そう言って嬉しそうに微笑む雪乃の笑顔は、私が今まで見た中で1番素敵な笑顔だった。