「確か……2日ほど前の夜です。Sランク寮へ行ったら追い返されて、雨の中立ってたら兄様が部屋まで連れていってくれて……」

追い返された……?2日前って私たちがイタリィ行った日だよね。

あの夜私はSランク寮に泊まった。一也か泰久が私がいるからって追い返しちゃったんだ。か弱い女性を雨の中追い返すって……鬼か。

「……大丈夫。大丈夫だよ」

私は雪乃を抱き寄せその背中を擦った。

雪乃は、実の兄を受け入れてしまったことに対して罪悪感を覚えているんだろう。雪乃が自分を許せないなら、今傍にいる私が許してあげなきゃいけない。

「人を好きになるのは悪いことじゃない」
「……っ」
「自分が変だなんて思わなくていい」
「き、汚いことをしたって、分かってるんです」
「大丈夫、雪乃は綺麗だよ」
「実の兄に体を許すなんて、あってはならないことだって分かってます……っ、でも……!」
「理性じゃどうにもできないもんがあるんだろ?」
「……っ」
「だいじょーぶだいじょーぶ。他の誰が認めなくても、オレが認めてやんよ」
「うっ……ふうっ……」

雪乃の涙でぐしょぐしょになった顔には、いつもの大人びた色気ではなく、幼い子供のような可愛さがある。

今まで辛かったんだろうな、澤兄妹は。自分の気持ち隠して、自己嫌悪ばっかして、好きな人に好きって言えない日々を過ごしてたんだ。

「――もう2度と、自分が他人と違うからって苦しんだりするな。どんな物事に対しても、この世界のどこかには必ず理解者が存在するんだから」

はっきりそう言ってやると、雪乃は堰を切ったように声を上げて泣くのだった。