部屋は帰ってくる10分前から自動で暖めてくれるよう設定してある。体が冷えているであろう雪乃を椅子に座らせ、ロボットにホットココアを作らせた。

「……わざわざありがとうございます」
「いえいえ。当然だろ、こんな寒い中女の子1人で外にいさせらんねーよ」
「哀様は優しいですね。最初に会った時もそうでした」
「最初にあった時?なんかしたっけか?」
「魅力的な女性と言ってくださいました。あれ、結構嬉しかったんですよ?」

いや、あれは私の優しさじゃなくて本音だから!魅力的だって自覚ないのかこの子!

ロボットがココアを2つテーブルまで運んできてくれたので、それを飲みながらこの美女を楽しませるために何をすべきかと考える。

あと2時間なら映画の一本くらい見れるかなー?あ、てかその前に聞きたいことが。

「何かあったのか?」
「え?」
「2時間も間違えるほどぼーっとしてたんだろ?」
「……」

雪乃の表情が曇ったので、あ、これは聞いちゃ駄目なやつだ、と思って「やっぱいいわ!」と自分の持ってる映画リストを見に行こうと立ち上がった―――その時、雪乃に後ろから縋るように抱き着かれた。

「哀様……っ、私を…、私を抱いてください……」

え、ええええええええええ!?

待っ……ちょっ……胸が!胸が背中に当たってる!柔らかい!

マジでいいの?雪乃みたいな可愛い子に誘われたらほんとにスイッチ入っちゃうよ?

って違う。

冷静になれ、ガツガツするな。

「……他の男の熱で小雪のこと忘れたいから?」

びくり、と雪乃の身体が大きく揺れた。

私を抱きしめる力が緩み、その温もりがそっと離れていく。

「…どういう……意味ですの」

怖がらせるつもりはなかった。

ただ―――あの夜雪乃が言っていた秘密というのは、自分の小雪への気持ちのことではないかと思ったから。違うのかもしれないけど。

「違ったらごめんだけど、雪乃は小雪のことが好きなのかなって」
「……」
「あ、いや、別にだからどうとか思ってないよ?そういう恋愛の形もあるんだろうなって思うし」
「……」
「禁断愛なんて今時珍しくもな―――…」

そこまで言ったところで、雪乃の目からぽろぽろと涙がこぼれ落ちた。

!?

「私……、」
「ご、ごめん!泣かせるつもりは……!」
「私……っ、兄様に抱かれてしまいました!」
「――――へ?」

泣いている雪乃から出てきた言葉は、予想外の内容だった。

「いけないことだとは分かっていたんです……!でもあの夜、兄様が私のことを女として強烈に求めてくれたことが嬉しくて……っ、私には生殖機能が無いから、大丈夫だろうって……!」
「え、ええええ。あ、あの夜っていつ?」