それから数日、哀は毎日休憩所へやってきた。

小雪としても哀が来ることは予想していたのだが、だからといって避けるように場所を変えることは無かった。

「小雪、オレさ。女って可哀相だと思うんだよ」
「ふーん。どういう観点で?」
「女の胸ってさ、左右のサイズ大体同じじゃん?多少の違いはあるだろうけど」
「……うん」
「それってつまんなくね?折角おっぱい付いてんのに、同じようなサイズのおっぱいしか楽しめないって可哀相だろ。左右別のサイズだったらいいのになって。オレは巨乳、貧乳、その間……色んなおっぱいの感触を楽しみたい」
「……うん」
「ああっ!どうしよう!」
「……うん?」
「それだと3つ必要じゃん!」
「は?」
「巨乳なのが右胸で貧乳なのが左胸だったらその間のサイズはどこに付ければいいの!?」
「……」
「3つおっぱいがないとダメじゃん!でもそれってもう人間じゃないよね!となるともう1人協力者が必要だよね!いつでもおっぱい揉ませてくれる協力者!」

(……どんな協力者なの、それ……)

「あ!」
「……何」
「小雪ちょっと笑った!笑顔初めて見た!」
「苦笑だけどね」
「苦笑でも嬉しい!小雪の笑顔好きだよ、オレ!」
「俺口説かれてる?」

小雪はふと、自分が久しぶりに他人の話をちゃんと聞いていることに気付く。

何だか新鮮な気持ちで目の前の女とは思えない話ばかりする女を眺めた。

ころころ表情の変わる、見ていて飽きないその女の子に対し、小雪は緩やかな好意を抱いた。

(この子が、俺の妹だったら良かったのに)

雪乃が他人で、哀が妹なら。小雪はきっと幸せになれたのだ。