そんなある日、休憩所で煙草を吸っている小雪に珍しく話し掛けてきたEランク隊員がいた。

その頃小雪が休憩所でよく見かけるようになっていた男だった。

その頃の小雪は他人に話し掛けられるだけでも苛立ちを覚えるような状態だったため、瞬間移動能力でどこかへ飛ばしてしまおうと考えた。

返事をするのも面倒で、何も答えず能力を発動させようとしたが―――そこで小雪は、男の形状が男のものではないことに気付いた。

Cランク以上の瞬間移動能力を人間を対象に使おうとすれば、服を着ていても身体の形が大体分かる。

(……何で女がここにいる?)

男、いや女は超能力部隊の軍服を着ており、小雪は少なからず困惑した。

「おーい、聞いてる?お前いっつもここにいるよな」

男の格好をした女は、無断で小雪の隣に座り、にひっと笑いかける。

「オレ、千端哀。最近この部隊に入ったんだ」

その時、小雪は妙な運命を感じた。

哀と名乗る女のホクロの位置は雪乃のホクロの位置と全く同じだった。

ただそれだけのことで。小雪はそれ以降哀を飛ばそうとしなかった。

この女相手なら欲情できるかもしれない、好きになれるかもしれない――そんな期待があったのだ。