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芳孝が雪乃にSランクの性欲処理をさせようとしていることを知った小雪は、唯一できる反抗とばかりにSランクであることを隠し、Cランク隊員として超能力部隊に入った。

義母は入院しているが、大きな屋敷で1人でいることも苦痛だった。

軍が運営する一般学習プログラムを受けることを条件に軍人となった小雪は、それまで以上に人を寄せつけなくなった。

中学の頃のような付かず離れずの関係を築くのでもなく、本当に人と関わらなかった。

人と関わることがそれまで以上に億劫になっていたのだ。

つまらない話ばかりするCランク隊員。退屈な訓練。何も起こらない世の中。その全てに興味を抱けなかった。

小雪は、いっそまた戦争が始まってしまえばいいのにとまで思った。

兵隊としての役割を果たす時以外に、自分の居場所を感じられる瞬間は無いような気がしていた。

1年、2年、3年……月日は過ぎるが、小雪の頭から雪乃の姿が離れることは無かった。

何年も会っていないというのに、雪乃の声や姿を忘れられない。

まるで呪いだ、と小雪は思う。