アタシをあの場所で見つけて、助けてくれたのは。

 でもあの様子を見る限り違ったようだ。


 それに現に助けてくれたのはトーガだと本人も言っているのだ。


 でも、どうしても月のようなあの人が頭から離れない。


 「なにボーッとしてんだよ」


 不意にトーガが顔を近づけてくるからアタシは驚いて顔を後ろに逸した。


 魔界の人、というか外の世界の人たちはこんなに距離が近いのが普通なのだろうか。


 「な、なんでもない」


 戸惑いながらも視線を彼に向けると、トーガの獣耳がピクピク動いているのが見えた。


 この耳はやっぱり、


 「狼……?」

 「ああ、これか」


 つい出た疑問をトーガはしっかりと拾って答えをくれる。


 「俺は狼族の生まれだ」


 『狼族』


 アタシは悪魔と天使しか知らなくて、それ以外の種族はわからない。