だけど、アタシと父と母も生きている。


 アタシはその理由を知らない。
 それは、二人がどうしても教えてくれないからだ。

 ただ、アタシは絶対に見つかってはいけないそうだ。


 それは二人も同じだがアタシは特にだと。


 此処は天界のはずれにある大きな森だと聞いている。
 

 人が来ることなんて滅多になく…いや、人が来たことなんて見たことない。だから二人以外の誰かに会ったことは皆無だ。

 
 この森から出たことのないアタシは外の世界がどうなっているのか知らない。外の世界がどんな風に、どんな人達がいるのか全く知らない。


 少しでも知りたいアタシは家にある本をたまに見る。その本たちには色んな物語があり、たくさんの登場人物が出てくる。


 物語の数だけ世界があって、たくさんの人達の想いが描かれている本を読んでアタシは少しだけ世界のことを知れたような気になる。