「おい、落ち着けよ」


 黒髪の女性をアタシから離したのは意外にも深い碧の瞳の青年だった。


 「ああ、ごめんよ。つい…ね」


 額を押さえた女性の顔は心なしか青ざめている。


 「いきなりごめんね。私はあんたのお母さんの親友だよ。ヨウカと呼んでおくれ」
 

 そう黒髪の女性、ヨウカは告げた。


 ああ、この人が母の言ってた友達なのだろう。

 母の知り合いだとわかったからなのか、渦巻いていた困惑と恐怖が晴れていくように感じる。


 「辛かったね。此処にいればもう大丈夫だから」


 涙ぐむヨウカをみて気付く。アタシは親を失ったけどこの人は親友を失ったのか。



 「母さんの友達……?」

 「ああ、そうだよ。この城で一緒に暮らしたんだ」


 懐かしむような瞳をして何処かを見つめるヨウカは少しだけ憂えた瞳を見せるがすぐに深い碧の瞳の青年を振り向いて、


 「ユウ、ヒカリちゃんの面倒見てあげるんだよ」


 ハッキリとした物言いで先程の青年に言いつけた。