目の前の青年ではなかったのか、と。
「……、あ、の」
「うん?」
獣耳の青年はアタシの発した言葉に耳を傾ける。
でもアタシには何を言ったらいいのかわからなくて俯いてしまうのだから申し訳ない。
どういえばいいのだろう
助けてくれてありがとう?
いや 死ぬつもりだったのだ
もうこの世界に生きる意味はないと、この世界から存在を消そうとした。それを救われたのだ。感謝するべきなのか、それとも、なぜ助けたのかと詰るべきなのかどうしてもわからない。
「どうした?」
青年は獣耳をピクリと小さく揺らしてアタシの顔を覗き込む。
「どう……」
「うん?」
「どういえばいいのかわからない」
アタシの言葉にその場の誰もが疑問を浮かべた顔をした。