「………ない、です」
目も逸らせないままアタシは小さく呟いた。
「そうか」
威圧感がすごいと思う。
本人にその気はないだろうけど確かにこの人からは先程の赤髪の青年、ディランよりも恐怖を感じる。綺麗すぎるというものもあるのだろう。
「…あの」
「あ?」
「此処は何処、ですか……?」
それでも……、怖いと思いながらもこの青年に問いかけたのは何故なのだろう。
獣耳の青年が言っていた様にアタシが怖いと思うものはないという言葉のせいだろうか。それとも、天使はいないという確信でもあったのだろうか。
自分のことなのにひどくあやふやだ。
「魔界」
一言、その人はとても面倒くさそうに答えた。