目を開けると其処は眩しくて、色鮮やかで……目を覆いたくなるほどに綺麗な花園だった。



 澄んだ青空と真っ白な雲が空を泳ぐ下で咲き誇る鮮やかな花はいつか母が言っていた場所だろうか。



 『私達が出逢ったのは綺麗な花園だったのよ。いつか三人で行きたいわ』


 そう頭の中で母の声が鳴る 。


 いつかの記憶に戻りたくても戻れないと思ってしまうのがひどく怖くてたまらない。


 今にも壊れてしまいそうなほどに怖くて仕方ないのに、此処は場違いなほどに穏やかで優しく在るものだから恨めしいとさえ思ってしまう。



 「……父さん……、母さんッ…」


 呼んでも答えてくれる人は何処にもいない。


 ただ風の音が耳元を掠めて、揺れる花だけが存在を示しているだけなのだ。


 クラリと眩暈がして体がその場に崩れ落ちた。