「……ええ、やっぱりそうよね」


 凛々しくて強い母の涙ぐむ姿はやはり"らしくない"。


 「ごめんなさい」


 苦笑した母は申し訳なさそうに眉を下げて、指先でアタシの目尻をそっと撫でた。その時、初めて自分が涙を流していたことに気がついた。


 「泣いたらダメよ? あなたは笑顔が一番似合うんだから」


 見上げた母はひどく頼もしく、力強く笑っていたのにアタシの心には不安が募っていくばかり。


 「哀しくなったら歌うのよ 。歌えば哀しくなくなるから」


 やだ、と何度も吐露するアタシの言葉は聞いてもらえない。


 母は先程より強く隙間がないくらいアタシを抱きしめた。


 すると突然アタシの体から眩い光が溢れ出した。


 驚き目を見張り動揺していると、

 
 「大丈夫、怖くないわ」


 安心させる声音から、きっと母はひどく綺麗に笑ってるんだろうと嫌でもわかった。