アタシの行為を諌める声はひどく冷たくて、思わず硬直して言葉に詰まってしまう。
「ヒノカ、連れていけ」
そんなアタシをいつもとは程遠い厳しい瞳で見た父はアタシを抱き締めてボソリと呟いた。大きな腕がアタシを力一杯抱きしめると、ゆっくりと温度が離れていく。
代わりにアタシは父よりもかなり細い腕が引き寄せそれに抱え上げられた。不意打ちで抵抗も出来ずに母の腕に収まってしまう。
「ま、待って……父さんが…っ!」
我に返り即座に言うも母はアタシの言葉を無視して走り出した 。
直前で父に手を伸ばすがその手は空を切った。
虚しくも届かなかった手がやけに視界に映える。