「どーゆーつもり? あやかに近づいて俺の個人情報でもさらすの?」

 ――俺はひまりを体育館扉の外に連れ出してから、強い口調で問い詰めた。
 彼女がこの学校に来てからというものの、いつ爆弾が投下されるのかとヒヤヒヤしている。

「そんなことしないよ。ただ、あやかちゃんと仲良くしたいなぁと思って」
「どうだか」

 あやかに近づいたのは単に偶然なのか。
 それとも、俺を意識してそうしてるのか。
 意図がつかめない。

「それに、どうして俺がいる高校へ? お前はとっくに期間終了してるだろ」
「藍に会いたくなったから親に頼んだの。しばらく会えないなんて辛かったから」

 ひまりがオーストラリアから追ってくるなんて思いもしなかった。
 これだけは唯一の計算外に。
 離れたいと思っても離れられない現実が俺にまとわりついている。

「俺は変わらないよ。お前がなんと言おうとも昔からの目標は達成させたいから」
「なによ、それ。聞いてない」
「別にお前には関係ない」
「関係なくはない! だって、私は……」

 ひまりは強い口調になって手を引っ張ってきたが、俺は眉一つ揺らさずに彼女を見た。
 すると、なにかを感じ取ったのか彼女の力が弱まる。

「……もしかして、あやかちゃんのことが本気で好きなの?」
「好きだよ。何年経っても忘れられないくらいにね」
「何年って……。なにそれ。私、知らないんだけど……」

 俺は人に何を言われようともあやかが好きだ。
 何年も、何年も何年も……、あやかだけを一途に想い続けている。
 だから、これから先どんなことがあっても誰にも邪魔されたくない。