なぜ。
 なぜここに!

「シャーロット。急にお邪魔して悪いね」

 なぜ私の屋敷にユーリ王子がいらしているのぉぉ!?
 メイドたち全員が緊張して動きがぎこちない。
 お母様もいつもより派手なドレスを身に纏っていた。

「ユーリ殿下! こんな狭苦しいところにおいでくださって! 姉のシンシアをお呼びしますからお待ちください」

「いやいや、シャーロットに用があるから」

「え、シャーロットですか!?」

 私に?
 私は扉の前で立っていたが、ユーリ王子が手招きをする。

「君に会いにきたんだ」

「殿下。私に何か用事でも」

「いいや、ただ会いにきただけだよ。君の歌声を聞きながら近くの湖にでも見に行こうかなと思って。君の屋敷の近くにあるだろう? 湖」

 ええ。ありますとも、婚約者を誤って落としてしまったあの湖が。
 お母様は焦った様子で殿下に言う。

「あの殿下。シャーロットよりも、シンシアに湖を案内させますわ。シャーロットには荷が重いかと」

「そ、そうですわ殿下! お姉様をお呼びして」

「いや、君がいいんだシャーロット」

 ユーリ王子はキリッと真面目な顔になり、真っ直ぐに私を見つめる。