ユーリ王子は私の腰に手を回して支える。王子の顔が一気に近くなって、私は顔を真っ赤にさせた。

「も、申し訳ありません!」

「いやいや、いいんだよ。それよりもシャーロット。シャーロットって呼ばせてくれないか?」

「もちろんです! 殿下」

「では、シャーロット。今度私の誕生日パーティーが開かれるんだけど、君も来てくれないかい?」

 私は驚いて目を丸くした。

「わ、私がですか!?」

「君の歌声は鳥をも魅了する。もっとその歌が聞きたいんだよ」

「で、ですが殿下」

「何か問題でもあるのかい?」

 私は自分のドレスの裾を握りしめ、うつむいた。

「殿下は私の二つ名をご存知ないのですね」

「二つ名?」

「私はシャーロット・デルファイン。またの名をどんくさ令嬢と言われておりますの! だから殿下の誕生日パーティーには参加できません! 私がいたらきっとパーティーが台無しになってしまいますわ!」

 私はそういって、小走りで中庭から出た。
 これでいいのだ。
 これなら誰も恥をかかずにすむ。

 殿下とのささやかな思い出が残せた。
 それだけで私は十分です。