シンシアお姉様と時間をずらして舞踏会に出向いた。私が来たとわかると、皆が私を避けていく。

「シャーロットよ。どんくさ令嬢の」「せっかくのドレスを汚されたらたまらないわ」「彼女の近くにいるとロクなことにならない」

 舞踏会の雰囲気は嫌いではなかった。
 音楽とダンスに包まれて、美味しいものを食べて楽しくおしゃべりする。そういう空間に浸れるだけでも私は幸せだった。
 でも今日は来るんじゃなかったと思う。

 ここに私の居場所はない。

 私は一人中庭に移動してベンチに座った。
 夜だと言うのに、紫色の小鳥が木の枝に止まっている。

 私は軽く鼻唄を歌って小鳥と会話をした。小鳥は嬉しそうにピィピィと返すと私の肩に飛び乗る。

「君、小鳥を操れるのかい?」

 私は声のする方を向くと思わず、え!と声を上げた。
 
 私に話しかけてきたのは、この国の皇太子であるユーリ殿下だった。

「殿下! あのこれは」

「非常に珍しい種類の鳥なんだ。よく見せてくれないかい?」

 私はハミングをして小鳥を指まで誘導する。
 王子は嬉しそうに鳥に近づいた。

「あぁ、なんて小さくて可愛らしいんだ。君はすごい能力をもっているんだね。君の名前は?」

 私の名前を言ったらきっと、気づいてしまう。
 私がどんくさ令嬢だって。

「シャーロット・デルファインですわ。殿下」

「デルファイン公爵家の! これはこれは」

「殿下! 私に近づかないほうが」

 私はベンチから立ち上がり、後ずさる。
 しかし、ドレスの裾が足にひっかかり倒れそうになった。

「危ない!」