「殿下。なぜ私のためにここまでしてくださるのですか?」

「それをここで聞くのかい? シャーロット」

「え?」

 王子は私に近づいて、耳元で囁いた。

「君に一目惚れしたからだよ」

「ひ、一目惚れ!? この私にですか!?」

「君の歌も素晴らしいが、君といるととても楽しいって気づいたんだよ。嫌かな?」

 嫌というかそういう問題ではない!
 私は顔を赤くさせて、彼から視線を反らす。
 
「い、嫌ではないです……」

「良かった。また君の屋敷に遊びにいこうと思うんだけどいいかな?」

「は、はい。お待ちしておりまあああ!!」

 私はまたドレスの裾を踏んでしまう。
 今回は流石の殿下も動けなかったみたいで、彼を押し倒した。

 何か柔らかいものが唇に当たっている。
 目を開けると、それはユーリ王子の唇だった!

「も、申し訳ありませんんんん!!」

 私が急いで彼から離れると、彼は少し照れながら笑った。

「君は本当に面白いね。シャーロット。あはは」

 ユーリ王子の笑顔につられて私もつい笑ってしまった。
 私は私のままでいい。
 そう言ってくれる人がちゃんとこの世界に存在してくれた。
 
 私は少しだけ、ほんの少しだけ自分のことが好きになった。

 完