辺りはまだシーンッと静まり返っている。
 上手くいかなかったの?

「素晴らしい歌声だ!」

 一人の公爵が拍手をすると、周りがそれに続いて次々と拍手をしてくれた。

「なんていう歌声なの! まるで天使が歌っているみたい」「涙が自然と流れてしまったよ。なんて美しいんだ」「彼女にあんな才能があったなんて知らなかった。また聞きたいわ!」

 良かった!
 私の歌が皆に届いたのね。
 私は嬉しさのあまり、涙を流した。

「皆、聞いてくれ」

 ユーリ王子が私の肩に手を置いて、話を始めた。

「彼女にはこんな素晴らしい才能があることを知ってほしい。そして彼女にはもっと良いところがたくさんあるんだ。だから、これからは彼女への侮辱はやめてほしい。次に彼女を蔑むようなことを言えば、この私が許さない」

「殿下……」

 観客たちは皆頷く。遠くにいたダンカン公爵でさへも悔しそうにしてはいるが、納得している様子だった。

「わかってくれたらいいんだ。さぁ、パーティーを開始しよう!」

 王子の開始と共に音楽が鳴る。
 それからダンスが始まった。
 
「私はもう、皆からどんくさ令嬢と言われなくなるのね」

「シャーロット」

 王子が跪いて、手を差し出す。

「僕と踊ってくれないかい?」

「でも私、へたくそで」

「かまわないよ。君と踊りたいんだ」

 私は彼の手をとる。
 皆が踊っているところで、私たちも加わった。

 殿下のリードがうまいのか、足裁きが早いのか。
 彼の足を踏みつけることなくダンスが続いていく。